1995年アトリエを始めた当初、私自身が何よりも子どもたちのつくる作品に魅了され、彼らと一緒に遊ぶように、自由で楽しい制作の時間を過ごしていました。最初は課題も少なく、子どもたちの思い思いの制作が中心でしたが、少しずつ課題を取り入れながら、ゆっくりと穏やかに時間が流れていきました。
そんな中、アトリエのあった西宮市・夙川に震災復興を兼ねたギャラリーができたことをきっかけに、「子どもたちの作品を発表する場をつくりたい」と思うようになりました。そこで展覧会に向けた制作が始まり、テーマを設けて学年に関係なく同じ課題に取り組むというスタイルが、初めから当たり前のように自然に始まりました。
2004年の「さつき展」までは、毎年、子どもたちによる共同制作を行っていました。年齢も学校も異なる子どもたちが相談しながら一つの作品をつくりあげる過程には、多様な意見が飛び交い、とても楽しそうでした。
しかし、子どもたちの生活が忙しくなり同じ時間に集まれなくなり、話し合いながらの共同制作が難しくなっていきました。
そこで、個々に制作した作品が、展示では一つの大きな作品として成立するような構成を工夫するようになりました。
自分の作品が展覧会の展示の工夫によって大きなインパクトのある作品になった事は子供達には刺激になったのではないでしょうか。
10年以上にわたって、自分なりに課題を考え、それに子どもたちが応えて次々と面白い作品が生まれていく日々。その中で、「教える側の色」が出てくるのは当然なのですが、それを少々面白く思わないのも私の癖でしょうか。
道具や材料の限界を感じる中で、私一人ではなく、他の大人の力も借りることで新たな可能性が開けるのではないかと考えるようになりました。実際には、個人の絵画教室でこの思いを共にしてくれる人を見つけることは難しかったのですが、願っていると心ある人々と出会うことができました。
陶芸家の浅井さん、ホビーショップの大木さん、私の京都市立芸術大学時代の友人でもある黄瀬さん。黄瀬さんには、技術面から材料の準備、展示設営に至るまで、私の思いをかたちにするため多大な協力をいただきました。
また、子供たちの作業をいつも手伝って下さった片伯部さん、そして、さつき展の展示作業に携わってくださった多くの方々、アトリエの活動に関心を持ち、継続的に取材してくださった都留文科大学の鳥原先生、杉本先生、大輪さんにも深く感謝しています。
そしてこのアトリエのwebサイトを話し合いを重ねて、とことん付き合い作ってくれた細井工房の細井さん。一人一人の成長の記録となった作品、展覧会と全てに細やかに気配りをして作ってくれました。
気がつけば沢山の大人の方達がアトリエに関わり子供達に関わってくれていました。
心より感謝しております。ありがとうございました。
2025年6月22日 上田由紀子
